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MILLENNIUM STEAM

MILLENNIUM STEAM の世界・概説


村田氏による、MILLENNIUM STEAMの世界の概説です。どうしてこの世界には重機関兵が誕生したのか、その結果世界はどうなったのか、といった内容です。

“MILLENNIUM STEAM”の世界

●もう一つのヨーロッパ
 「MILLENNIUM STEAM」の舞台。それは、我々の世界とは少々異なる歴史をたどった近代ヨーロッパ世界だ。
 科学技術が練金術と完全に分離しなかったこの世界では、折りしも神聖ローマ帝国皇帝ルドルフII世が宮廷に多くの練金術師を招いて機械や魔術の研究に没頭していた。そして練金術師たちが発見した二つの技術、石炭製鉄と蒸気機関は世界を一変させた。鉄鋼生産は飛躍的に増大し、木材より安価に供給されるようになっていった。
 やがて神聖ローマ帝国が崩壊すると、ルドルフII世の遺産は亡命者たちによって各国に伝えられた。そして帝国の遺産から新たな発明……蒸気機関の効率を飛躍的に高める特殊合金ARCHNUMが生み出される。それは扱い易い小型の蒸気機関や、城すら動かせる強力な蒸気機関の出現に道を開いたのだ。

●蒸気兵団の登場
 神聖ローマ帝国を崩壊させたのは、三十年以上も続いた宗教戦争だった。長い戦争がドイツを荒廃させ、国力の衰えた帝国は外敵の侵略にひとたまりもなく滅び去ったのだ。この事件に人々は戦慄し、諸国は強力な軍隊の維持に懸命となった。
 優秀な兵士の訓練には、莫大な時間と経費を要した。余りにも高価な軍隊の損失を恐れる君主たちは、兵士を防護するため騎士の甲冑に再び目をつけた。重たい甲冑の機動力を高めるため、新発明の小型蒸気機関が取り付けられた。機関兵の登場である。そして兵士の消費する膨大な石炭と弾薬を運搬するため、機動城塞が考案された。
 こうして機動城塞が戦争の全てを支配する時代がやってきた。巨大な機動城塞を敵領土の重要地点に到達させれば、敵は降伏するしかない。逆に言えば、機動城塞を足止めできさえすれば戦争に勝てるのだ。
 機動城塞を阻止するには同じく機動城塞による防御しかない。平原をゆっくりと移動する機動城塞同士は、互いの推進装置を狙って砲撃を繰り返す。それでも決着がつかなければ、いよいよ蒸気機関兵の出番だ。味方の機動城塞から飛出した彼らは黒煙を上げて突撃する。弾雨をものともせず肉迫する彼らは、蒸気ハンマーを振るって鉄の城壁を破り、機動城塞を内部から陥落させるのだ。
 その一方、銃器や大砲の改良は遅れたままだった。先込め銃の弾丸は機関兵の装甲に弾き返されてしまうし、黒色火薬を用いた大砲で、機動城塞を完全に破壊することは困難だった。たとえ撃破されても、兵士が戦死することは滅多になくなっていた。

●蒸気大戦勃発!
 戦死者がほとんど出ないとは言え、国力を傾けた機動城塞が破壊されたり、貴重な蒸気機関兵が捕虜になることは大打撃だった。君主たちは用心深くなり、もっぱら威嚇により目的を達することに専念した。戦争は次第に、機動城塞を動かす手腕を競うチェスゲームと化していった。
 だがそんな良き「無血戦争」の時代も、一人の王の出現によって変わろうとしていた。新たにドイツ皇帝を宣言したルドルフ大王である。かのルドルフII世の名を受け継ぐ彼は、神聖ローマ帝国を再建すべく断固とした決意で機動城塞を前進させた。
 ルドルフ大王が正面対決も辞さないことを知った時、全ヨーロッパが諸国が驚愕した。諸国は、野望を阻止するため、それとも英雄の理想を実現するため、次々と機動城塞をヨーロッパ中央の平原に送り込んでいった。
 ヨーロッパの運命を決する大戦争。しかし、君主たちがその国力を傾けて造り上げた機動城塞や機関兵が、本当に期待通りの威力を発揮するのかどうか、それを知る者は誰もいなかったのである……。

by GORO



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